スペイン約1年の無政府状態脱出で起きた悲劇
右派政権決定と左派の分裂
これまでスペインは2015年12月、2016年6月の総選挙を経て、約11カ月政権不在が続きました。
しかし、昨日10月29日の国会投票にて国民党(Partido Popular/PP)のラホイ政権が支持170票、反対111票、棄権68票、そして辞退1票という結果を得て、与党に決定しました。
何故こんなにも政権不在が長引いたのか?
- 2009年から問題となっているグルテル汚職問題裁判により、前政権の国民党(PP)の関与が次々と明白になり、国民不信が広がった。
- 左派 社会労働党(PSOE)VS 右派 PP という構造から、
左派にUnido Podemos(We can党)、右派にCiudadanos(公民党)が加わったことで、
⇒2回の選挙とも過半数越えする党が出ず、大きく4つの政党に票が分散したこと。
第一回と比べて、第二回選挙の結果は主要な4政党に注目すると
PPが14議席、PODEMOSが2議席増やし、
PSOEが5議席、Ciudadanosが8議席減らし、
第一回と同じく、どの政党も過半数を割ることはない結果になりました。
知ってると面白い:PSOE分裂
10月9日
Gürtel汚職事件の裁判で次々とPP議員の汚職が発覚するなか、当時のPSOE代表のペドロ・サンチェスはPP政権阻止を働きかけます。
しかしながら
- 約一年も無政府状態になることの危惧からのPP政権反対で起こる第三回総選挙に対しての反対
- ペドロ・サンチェスの権力拡大との批判
から、10月9日の日曜日にPSOE間の話し合いのうえ、同代表は党首を辞任に追い込まれました。
10月23日
二週間後の日曜に再び、PSOEは党全体投票を開きます。
その結果、PSOEは国会での政権投票を棄権することが決まり、
実質保守党右派のPP政権を後押ししてしまうことになりました。
これを受けて23日の段階で、ほぼ確実にPPが政権を取ることが決まりました。
今までの二回の選挙において、
PSOEは汚職が蔓延しているPPには政権を持たせない、
ということで支持を得てきました。
つまり、棄権という決断は、支援者の期待を大きく裏切るものでした。
PSOE党綱領
PSOEの党綱領には、全議員が国会内で一致した投票をしなければならない、
という決まりがあります。
しかし、
ミゲル・イセタが率いるPSC(カタルーニャ地方のPSOE)を始めとした八議員が
23日の棄権決定後、
PPラホイ政権に棄権ではなく反対票を投じるとしており、党内は分裂状態となります。
棄権の選択は、支持者を裏切るだけでなく、
今後の国会での発言力がなくなることを示しているため、
第一野党はPODEMOSに変わります。
10月29日:国会投票
国民党(PP)のラホイ政権は
支持170票、反対111票、棄権68票、そして辞退1票という結果を得て、
誕生しました。
反対票の中の15票はPSOE議員が党綱領を破って投じたもので、今後党から罰せられるのか、ないのか注目されます。
辞退票はPSOE前党首ペドロ・サンチェスによるもので、
- PPへの反対:国民の支持した政治
- PSOE党綱領の決まり(全議員一致で棄権)
をどちらも破らずに済む方法として、議員権利を辞退しました。
涙交じりの辞退演説では、今後分裂したPSOEを立て直したいとし、党首返り咲きを狙っています。
問題山積みなスペイン政治、これからも注目です。