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スペインニュース

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ENTSO-E会議レポート

先週、ブリュッセルで行われたENTSO-E  (the European Network of Transmission System Operators for Electricity) に参加してきました。

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ENTSO-E*リンク

European Network of Transmission System Operators for Electricity

この会議は、「EUのエナジー戦略をどのように企業・市民に理解してもらうか」

というテーマで様々なステークホールダーが集まり、色々な話題に分けて

短い間ながら、議論するという形式のものでした。

いろいろなステークホールダー

  1. EU:各エナジー関係の部署から
  2. EU;EUメンバー国のエナジー関連省庁から数人
  3. 企業:EUメンバーの各エネルギー企業の社長から、下っ端の人まで
  4. 企業:(ユーラシア大陸でつながっていることから)中国・韓国などからのエネルギー関連企業数人
  5. 市民:市民アナリスト
  6. 市民:各テーマごとに行われた街頭インタビューのビデオ
  7. メディア
  8. その他:学生
    聞いたところによると日本の公職の方も偉い人しか行けないコンフェレンスに居たそう。

**EUとは?**

今年の4月慶応大学のEU研究学会の出した調査結果によると、
http://eusi.jp/wp-content/uploads/2016/04/EUSI-Commentary-vol73.pdf

日本の大学生はニュースに良く触れていたり、授業で勉強していたりすると
EUは政治的な要素が強いと思っており、

ある程度レベルの高い大学に在籍するものの、EUのことをそれ程知らない学生は
単なる経済の同盟だと考えている割合が高いという事で、

まず簡単にEUについて説明します。

【EUの基盤三大思想】
1.「第三次世界大戦を防ぐ」 
2.「当時のソ連(共産主義)の脅威からヨーロッパ(自由経済主義)を守る」
3.「アメリカからの自立」


【政治的動機】
・1を受けて、今まで戦争の下になっていた資源豊富なフランスとドイツ間のルール地方を超国家機関ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)を形成
することをフランスの政治家シューマンが宣言したのが「ヨーロッパ連邦」の始まりと言われています。
・ただ「超国家」という概念は、民主主義を強く推し進めるヨーロッパ内で浸透するのは難しく、なかなか進みませんでした。
・しかし、その後アメリカのニクソンの時代になると双子の赤字などを受け経済に余裕がなくなってきたので、だんだんヨーロッパからアメリカが防衛の手を引き始めます。
・そこで、2と3の思想より、新たに連邦への道にエンジンがかかります。

【経済的動機】
・市場の規模が大きくなれば、経済発展の規模も大きくなるという考えから、超国家機関の魅力とされたのが経済統合でした。
(そんな超国家を代表するのが現在のユーロです。)
・また1991年の冷戦終結で、東欧革命などが起きたことで、規模の市場、ヨーロッパ統合への期待がさらに高まります。
・現在は、世界で唯一の超国家機関・欧州連合としてヨーロッパ内の28か国をまとめています。

【現在のEU思想】
4.ヨーロッパの価値観を守る(ローマ帝国再形成・キリスト教社会・民主主義・人権保障など)
5.経済発展
6.グローバルな問題での発言権拡大(地球温暖化・紛争/戦争・難民問題・エネルギーなど)
などが付け加えられています。

B.EUの問題

EUの問題として大きく上げられるのは、

民主主義や自決権が超国家主義と共存できないという点です。

実際、Brexitで、EUへの不信が高まったのは
「EUが何をしているのか分からない」市民が多かった点が大きいです。

「シェンゲン協定で移動が自由、
 でもそのおかげで難民や移民まで移動してきてしまう。」
「経済危機。どうして私たちがスペインやギリシャ、イタリアの面倒を
 見なきゃいけないんだ。」などなどが多く聞かれた声かと思います。

C. コンフェレンスで見えた事

Bでの民主主義の不在はEU内でも自覚はしているようで、

市民の街頭アンケートが流れるたびに

 「EUのエネルギー政策?」「スマートエナジーって何?」といった声に

                          苦笑的な笑いが起きました。

スマートエネルギーは、省エネなもののコストがよりかかるため、

「市民にちゃんと理解してもらわらないといけない」というのも議論のテーマでした。

ある市民アナリストが、

「専門家が話すような複雑な説明では、絶対に理解はしてもらえないから、
                シンプルに環境にいいという利益を主に出すべき」

と言ったのに対して、

他のアナリストが反対意見を提示するという形で話し合いが進んでいました。

(前者の唱えた情報操作の恐ろしさに個人的には鳥肌が立ちました)

 

また、スマートエネルギーの会社側も

「スマートエネルギーで利益を一番受けるのは市民であるべき」という理想を唱えれば

一方で「会社側の利益になれば、市民にも利益になる」と考えている社長もいて、

こうしてEUとエネルギー会社が意見交換しながらスマートエナジーを推し進めている

と考えると、民主不在がはっきり見えました。

全体的に受けたイメージは

      皆が「市民は何も知らないけど、市民のためを考えてるよ」

                         といった考えを持っている。

という事でした。

D. 食事会で分かった事

統合の歴史からも分かるように

エネルギーはEUにおいて超国家に任せるべき問題と見られてきました。

現在は、日本の3.11を受けて提言しているドイツの原子力廃絶政策

        EUのスマートエネルギー政策の一つとして提案されています。

食事会で色々な人に話を聞いて分かったことは、

1.ドイツの力はとても強いという事。
2.ただどの人もエネルギー政策においては、否定的な人がいなかったこと。
3.そして、日本の原子力代替政策の水素電気には否定的だったこと。
4.また、超国家エネルギー政策が、スペインやギリシャなどの現在ですら
  お金が払えなくて不足している国々で通用するのかという問いには
  政府がどうにかしなくてはいけない問題としていること。

5.EUは全ての動きが遅い。
                                  です。

E. Dにおける個人的見解

3:現在日本は水素電気を推し進めていますが、EUの方の反応としては

  1. 水素は原子力と同じくらいの規模を持つ。
  2. 水からだと手間なので、結局石油などから抽出して作る。結局石油に頼る。
  3. アメリカは反対している。協力体制に無い。
  4. 日本はEUの理解を頼りにしているが、賛成できない。

                               などでした。

4:EUの経済調整下にある国々への政策によくみられる事ですが、
  超国家機関ではあるものの、国内の政治はやはりその国内の政治家に任せている
  ので、なかなかEUで決められた理想にそれらの政治が達するには難しいものが
  あります。

これまでの記事でも述べてきたように、
  現在スペインでは電気・水道が払えずに冬を過ごす人々がいます。
  それを考えた時に、スマートエネルギーの実現性は無に近いと考えられます。
  これはEU選択主義か民主選択主義かという問題ですが、
  これから、どうエネルギー政策が取り入れられてくるのか
  (EUは全ての動きが遅いらしいですが、)興味深い所です。

 

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