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スペインニュース

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Podemosの将来を決める選挙:結果、イグレシアス側の勝利

Podemos内での選挙(以下23日に編集)

 

12月18~20日まで、PODEMOS内での云わばリーダー信任を兼ねた

PODEMOS内での決定の下し方についての選挙が行われました。

またPODEMOSが3年後の国内総選挙に向けてどのような政治の道を選ぶか

を決める大事なものとなります。

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Pablo Iglesias e Íñigo Errejón, en la reunión del Consejo Ciudadano. En vídeo: Pablo Iglesias, el pasado sábado. PACO CAMPOS / ATLAS
パブロ・イグレシアスとイニィゴ・エレホン。先週土曜日。

その政治方針が党内トップ2の間で分かれており、注目されています。

1.パブロ・イグレシアス率いるPablista

  DesBorda(舵を切ろう)という運動を展開。

パブロ自身は、Podemosは様々な意見を反映する団体であるべきと考えてはいるものの

党内で何かを決定する時は、PSOEのように一致団結で皆が同様の投票をすべきという

案を出していました。

パブロ自身、

「Podemosのために提案されたうち、悪いと思える意見はなかったが、私たちは

 一番良い提案をしている。今大事なのは、一つのPODEMOSを保つこと」
                              と発言しています。

2.イニィゴ・エレホン率いるErrejonista

パブロが第一リーダーを保つ事には賛成。

ただRecuperar la Ilusión(幻想を正そう)という運動を展開し、政治方針で

意見の相違がみられる。

イニィゴ・エレホンは、PSOEまたIU(左派連合)の一致団結主義の失敗を踏まえ、

(下線:下に関連記事を貼り付けています。)

権力分散型の複数意見が台頭できるシステムを唱えています。

また

「PODEMOSの分裂を促しているのではない。これからも同じ道を歩んでいくべき」

「人で選ぶのではなくて、今後のプロジェクトを考えて選ぶべき」としています。

 

ちなみに先日、エレホンがバルセロナに彼の運動の宣伝のために来たので、
その集会に参加してみました。

Podemosは道に出て、政治に興味のない人に関心を持たせることを目標にしています。

そのうえで、彼が大事だとしていたのは人々の不満をPolitizar・政治化すること。

つまり、

不満は感情論では解決しない。政治的観点に置き換えて動かなくてはならない。

という思想を持っている人です。

彼自身、パブロとの分裂と騒がれている件について、

「自分が忠実になれと言われた時、出来る事は真実を述べる事だけだ」

と言っており、

現実をみて、向き合って、熱く(厚く)なれる政治家だと評価されています。

 

そんななか、結果が23日夕方に出ました。

パブロ・イグレシアス側が、40830票獲得(41.57%)

イニィゴ・エレホン側は38419票獲得(39.12%)

反資本主義側が10313票獲得(10.50%)

となり、

パブロ・イグレシアスの信任と一致団結型投票システムが採用されることに

なりました。

ツイッターでパブロ・イグレシアスは

「勝者も敗者もいない。これからも一つのPODEMOS、そして多様性のあるPODEMOSを作っていこう」

とコメントしています。

 

(過去の記事)

1.二人の分裂はここにも。。

spainnewsjp.hatenablog.com

2.PSOEの失敗

 

spainnewsjp.hatenablog.com

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ENTSO-E会議レポート

先週、ブリュッセルで行われたENTSO-E  (the European Network of Transmission System Operators for Electricity) に参加してきました。

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ENTSO-E*リンク

European Network of Transmission System Operators for Electricity

この会議は、「EUのエナジー戦略をどのように企業・市民に理解してもらうか」

というテーマで様々なステークホールダーが集まり、色々な話題に分けて

短い間ながら、議論するという形式のものでした。

いろいろなステークホールダー

  1. EU:各エナジー関係の部署から
  2. EU;EUメンバー国のエナジー関連省庁から数人
  3. 企業:EUメンバーの各エネルギー企業の社長から、下っ端の人まで
  4. 企業:(ユーラシア大陸でつながっていることから)中国・韓国などからのエネルギー関連企業数人
  5. 市民:市民アナリスト
  6. 市民:各テーマごとに行われた街頭インタビューのビデオ
  7. メディア
  8. その他:学生
    聞いたところによると日本の公職の方も偉い人しか行けないコンフェレンスに居たそう。

**EUとは?**

今年の4月慶応大学のEU研究学会の出した調査結果によると、
http://eusi.jp/wp-content/uploads/2016/04/EUSI-Commentary-vol73.pdf

日本の大学生はニュースに良く触れていたり、授業で勉強していたりすると
EUは政治的な要素が強いと思っており、

ある程度レベルの高い大学に在籍するものの、EUのことをそれ程知らない学生は
単なる経済の同盟だと考えている割合が高いという事で、

まず簡単にEUについて説明します。

【EUの基盤三大思想】
1.「第三次世界大戦を防ぐ」 
2.「当時のソ連(共産主義)の脅威からヨーロッパ(自由経済主義)を守る」
3.「アメリカからの自立」


【政治的動機】
・1を受けて、今まで戦争の下になっていた資源豊富なフランスとドイツ間のルール地方を超国家機関ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)を形成
することをフランスの政治家シューマンが宣言したのが「ヨーロッパ連邦」の始まりと言われています。
・ただ「超国家」という概念は、民主主義を強く推し進めるヨーロッパ内で浸透するのは難しく、なかなか進みませんでした。
・しかし、その後アメリカのニクソンの時代になると双子の赤字などを受け経済に余裕がなくなってきたので、だんだんヨーロッパからアメリカが防衛の手を引き始めます。
・そこで、2と3の思想より、新たに連邦への道にエンジンがかかります。

【経済的動機】
・市場の規模が大きくなれば、経済発展の規模も大きくなるという考えから、超国家機関の魅力とされたのが経済統合でした。
(そんな超国家を代表するのが現在のユーロです。)
・また1991年の冷戦終結で、東欧革命などが起きたことで、規模の市場、ヨーロッパ統合への期待がさらに高まります。
・現在は、世界で唯一の超国家機関・欧州連合としてヨーロッパ内の28か国をまとめています。

【現在のEU思想】
4.ヨーロッパの価値観を守る(ローマ帝国再形成・キリスト教社会・民主主義・人権保障など)
5.経済発展
6.グローバルな問題での発言権拡大(地球温暖化・紛争/戦争・難民問題・エネルギーなど)
などが付け加えられています。

B.EUの問題

EUの問題として大きく上げられるのは、

民主主義や自決権が超国家主義と共存できないという点です。

実際、Brexitで、EUへの不信が高まったのは
「EUが何をしているのか分からない」市民が多かった点が大きいです。

「シェンゲン協定で移動が自由、
 でもそのおかげで難民や移民まで移動してきてしまう。」
「経済危機。どうして私たちがスペインやギリシャ、イタリアの面倒を
 見なきゃいけないんだ。」などなどが多く聞かれた声かと思います。

C. コンフェレンスで見えた事

Bでの民主主義の不在はEU内でも自覚はしているようで、

市民の街頭アンケートが流れるたびに

 「EUのエネルギー政策?」「スマートエナジーって何?」といった声に

                          苦笑的な笑いが起きました。

スマートエネルギーは、省エネなもののコストがよりかかるため、

「市民にちゃんと理解してもらわらないといけない」というのも議論のテーマでした。

ある市民アナリストが、

「専門家が話すような複雑な説明では、絶対に理解はしてもらえないから、
                シンプルに環境にいいという利益を主に出すべき」

と言ったのに対して、

他のアナリストが反対意見を提示するという形で話し合いが進んでいました。

(前者の唱えた情報操作の恐ろしさに個人的には鳥肌が立ちました)

 

また、スマートエネルギーの会社側も

「スマートエネルギーで利益を一番受けるのは市民であるべき」という理想を唱えれば

一方で「会社側の利益になれば、市民にも利益になる」と考えている社長もいて、

こうしてEUとエネルギー会社が意見交換しながらスマートエナジーを推し進めている

と考えると、民主不在がはっきり見えました。

全体的に受けたイメージは

      皆が「市民は何も知らないけど、市民のためを考えてるよ」

                         といった考えを持っている。

という事でした。

D. 食事会で分かった事

統合の歴史からも分かるように

エネルギーはEUにおいて超国家に任せるべき問題と見られてきました。

現在は、日本の3.11を受けて提言しているドイツの原子力廃絶政策

        EUのスマートエネルギー政策の一つとして提案されています。

食事会で色々な人に話を聞いて分かったことは、

1.ドイツの力はとても強いという事。
2.ただどの人もエネルギー政策においては、否定的な人がいなかったこと。
3.そして、日本の原子力代替政策の水素電気には否定的だったこと。
4.また、超国家エネルギー政策が、スペインやギリシャなどの現在ですら
  お金が払えなくて不足している国々で通用するのかという問いには
  政府がどうにかしなくてはいけない問題としていること。

5.EUは全ての動きが遅い。
                                  です。

E. Dにおける個人的見解

3:現在日本は水素電気を推し進めていますが、EUの方の反応としては

  1. 水素は原子力と同じくらいの規模を持つ。
  2. 水からだと手間なので、結局石油などから抽出して作る。結局石油に頼る。
  3. アメリカは反対している。協力体制に無い。
  4. 日本はEUの理解を頼りにしているが、賛成できない。

                               などでした。

4:EUの経済調整下にある国々への政策によくみられる事ですが、
  超国家機関ではあるものの、国内の政治はやはりその国内の政治家に任せている
  ので、なかなかEUで決められた理想にそれらの政治が達するには難しいものが
  あります。

これまでの記事でも述べてきたように、
  現在スペインでは電気・水道が払えずに冬を過ごす人々がいます。
  それを考えた時に、スマートエネルギーの実現性は無に近いと考えられます。
  これはEU選択主義か民主選択主義かという問題ですが、
  これから、どうエネルギー政策が取り入れられてくるのか
  (EUは全ての動きが遅いらしいですが、)興味深い所です。

 

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【管理人コラム】ネット、新聞で議論の的。MrGranBomba

MrGranBomba(Mr.巨大爆弾)は

隠しカメラの前で一般の人に向かって侮辱をすることで有名な20歳のYoutuberです。

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El Mundoより:
MrGranBomba, el 'youtuber' que recibió el tortazo: "Pido perdón, pero sólo le llamé 'caranchoa' una vez" | F5 sección | EL MUNDO

そんな悪ふざけをしている彼が

今回、何故こんなにも彼がインターネット上を賑わせているのか?

それは

「Kinki(スペインのヤンキー的な若者)に道を聞いた後で、
もしCara anchoa(アンチョビの顔:侮辱言葉)を言ったらどうなるか」

というテーマで、仕事しているお兄さんに話しかけたところ、

ビンタをされてしまったからなのです。

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El PaisよりVideo Cara anchoa: Agresión a MrGranBomba: ¿Acaso el repartidor no se merece también una bofetada? | Tentaciones | EL PAÍS

スペインにはもともと俗語の間投詞などで悪い言葉を老若男女問わず

平気で使う文化がありますが、やはり人に向かって使うことは大変失礼です。

しかし、

Youtubeの編集された動画から大手のEl PaisやEl Mundoなどの新聞まで

このビンタについて取り扱い、どちらが悪いのか。どちらも悪いんじゃないか。

MrGranBombaに天罰が当たったんだ。などなど議論している姿は、

少し変に感じられます。

当の本人は、自分が間違っていたと認めてはいるものの、

騒ぎは当分続きそうです。


私は、

映画監督のミヒャエル・ハネケが「人は暴力を見るのが好きだ」と言っていたことを

思い出しました。

言葉の暴力も身体の暴力も、暴力は暴力。

それらを面白がって真似する人が増えないことを願っています。